嚥下性肺炎について(2000年12月)

 嚥下(えんげ)とは耳慣れない言葉ですが、これは食べ物が口腔から胃まで通過することをいいます。まず、ご自分の意思で唇を閉じ、物をかみ砕き(随意運動)、後は咽頭、食道の不随意運動(意思と関係なく体が反射的に動いてくれます)で胃に送られていきます。ところで、高齢者の方の自立を損なう2大疾患は転倒による骨折と嚥下性肺炎なのです。肺炎というと風邪をこじらせてなる病気というイメージが強いですが、気管に食べ物、唾液、胃液などとともに細菌が入り込めば、風邪でなくても肺炎を起こします。
 人は反射的にノドのところで気管に物が入らないようにして食道の方に送り込むのですが高齢者になりますと、体の反射が低下しますし、またノドの周囲の筋肉の筋力も低下しますのでそれがうまくいきません。また、咽頭の手術をした方や口腔内乾燥症の方の嚥下はしづらいです。また、高齢者の方は食物が気管に入ったときに咳き込んだり、むせて異物を気管から排出する機能が低下していますから、誤嚥したり、窒息したりしやすくなります。お口の中の細菌とも関係します。寝ている間にお口の中の細菌が唾液や食べかすや痰とともに気管に入ることもあります。
高齢者は気づかないままに気管に入りやすく、また抵抗力も低下しているためにこの菌が肺に入り、肺炎を起こしてしまいます。気づかないこのような肺炎は肺炎の中で約80%をしめます。
 口腔内は歯磨きやうがいによって清潔にしておいてあげなければいけません。また、下や頬の粘膜にも細菌はたまりやすいため、この部分をやわらかい歯ブラシで掃除するとより効果的です。食事の時はその時の体位を考えてあげなくてはなりません。座位もしくは半座位でとり、食後もその体位を保つことが理想的です。食物の粘ちょう度、食後のお口の掃除も考えてあげなければなりません。
 お餅もおいしい季節に近づきました。おいしい安全な食事をしてください。

(文責 医学博士 梁瀬 武史)

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