市民新報コラム

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インプラント周囲組織炎(2012年8月)

インプラントは天然歯と異なり、虫歯になることはありませんが、天然歯より周囲組織である歯ぐきが口腔内細菌により感染をおこしやすいため、インプラント周囲組織炎を起こす場合があります。
症例によって異なりますが、インプラントを受療された患者さんは1~3ヶ月に一度の定期検診とインプラント周囲のおそうじが必要ですが、痛みを感じないと定期検診を忘れがちになり、数年たってしまう場合があります。そして、数年後、咬むと痛みを覚えたり、歯ぐきが腫れたりして異常に気がつき、おみえになります。

軽度のインプラント周囲組織炎ですと、スケーリングやエアーフローを行い、患者さんご自身が清掃に留意して下さると治癒しますが、中程度以上の場合は細菌感染が進んでいるため、治療が必要になります。治療法は、抗菌剤の服用、各種レーザー照射、光感作療法(これは、ある薬剤に特殊な波長のレーザーを照射し、活性酸素を発生させ、インプラント周囲のポケット内の細菌を死滅させる治療法)、インプラント周囲の薬液消毒などがあります。もちろん、患者さんご自身が今まで以上に口腔内清掃を精励されるのは言うに及びません。
早期に治療をして治癒した後に定期検診と充分な口腔内清掃をすれば、その後もインプラントを撤去することなく咬むことができます。一般的にインプラント周囲組織炎が治癒しても失われた骨は再生しません。骨造成法に準じた自家骨や骨補填材を使用した骨の再生療法もありますが、その予後は不確実です。手遅れになってしまい、骨の吸収が重度でインプラント自体がグラグラしている場合は残念ながら、インプラント自体を撤去しなければいけません。

現在、何も自覚症状がなくても風邪や疲れ気味の時にインプラント周囲の歯ぐきに異常を感じたことがある方やインプラントを受療されて定期検診を怠っている方は、ご自身の健康のためにもすぐに定期検診を受診されることをお勧めします。

(文責 日本口腔インプラント学会 指導医 医学博士 簗瀬武史)

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