市民新報コラム

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噛むことと認知症 その4 (2014年5月)

ヒトの「咬む力」は約30kgと言われています。咬むことは健康のためにも重要なことです。この記事をお読みになった後「こめかみ」に指をあて、硬い食べものを奥歯で噛みしめてみてください。「こめかみ」がピクピクしませんか? 咬むことにより顔面の血管が収縮しているのがよくわかりませんか? この血管の収縮が血のめぐりをよくして、しいては脳の血流も促進され、脳への酸素や栄養の供給もよくなり、血栓などもできにくくなり、脳梗塞に起因される脳血管性認知症を予防することができます。

最近、日本人間ドック学会が高齢者の方の高血圧の基準を変えて、論議が起こっていますが、血管は年齢とともに硬化してきていますから、そこに詰まらないように血の流れをよくするためには強い圧力(血圧)で血を押し出さないと血のめぐりは悪くなってしまいます。「咬む」ことによる血管へのポンプ作用はこれを助けることができます。また、力をいれて「咬む」ことにより閉口筋や顔面の筋肉をかなり使います。当然、顔面の血流量は増えますから、お顔の筋肉の衰えを防ぐことができますし、顎顔面領域の代謝活性もあがります。きちんとした歯科治療をされ、適合した入れ歯をお使いの方は見た目も実年齢からお若く見えます。

近年、下顎が小さく、歯並びの良くないお子さんが多く見受けられます。硬いものを力を入れて「咬む」ことをしない食事の影響により、顎顔面領域の筋肉や下顎の成長が十分でないために永久歯が下顎にきれいに並びきらなくなってきているのです。また、世界的に使われているエーザイのアリセフトという認知症(アルツハイマー病)の改善薬があります。この薬は神経伝達物質であるアセチルコリンを分解するコリンエステラーゼの働きを抑える作用があります。実験でネズミの奥歯を抜くとアセチルコリンの量が減ってしまうことは明らかになっています。つまり、咬めなくなると認知症の進行も加速されやすくなってしまうのです。

(文責 神奈川歯科大学客員教授 医学博士 簗瀬武史)

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